専門家による記事
難治性統合失調症の定義と生物学的基盤の候補 #1
“グルタミン酸仮説は治療抵抗性統合失調症の病態を説明する仮説として有力”
# 難治性の統合失調症とはどのような状態を意味するか教えてください。
統合失調症治療の中心は半世紀前に発見されたドパミン受容体拮抗作用を持つ抗精神病薬で、統合失調症のドパミン機能異常仮説の根拠となっています。統合失調症の陽性症状(幻覚や妄想)に対し、約3割の患者さんでドパミン受容体拮抗薬(従来の抗精神病薬)は無効です。
治療抵抗性統合失調症とは、忍容性に問題がない限り、2種類以上の十分量の抗精神病薬(クロルプロマジン換算600mg/日以上で、1種類以上の非定型抗精神病薬を含む)を適切な服薬コンプライアンスで十分な期間(4週間以上)服薬しても反応が認められなかった統合失調症と定義されています。
中島 振一郎
著者サイト
https://scholar.google.com/citations?user=RLEo1WUAAAAJ&hl=ja&oi=ao
肩書
MD, PhD
所属
慶應義塾大学精神・神経科、Multidisciplinary Translational Research Lab
紹介文
中島振一郎先生は平成14年に慶應義塾大学医学部をご卒業され、同24年に慶應義塾大学医学部医学研究科を修了されました。その後トロント大学医学部精神科に留学され、主に脳画像を用いて統合失調症の治療反応性の研究をされています。中島先生の研究は国内外から高く評価され、American Society of Clinical Psychopharmacology Annual Meeting New Investigator Award, World Psychiatric Association International Congress Young Psychiatrist Award、慶應義塾大学医学部三四会奨励賞をはじめとした多数の名誉ある賞を受賞されています。今回は中島先生に難治性の統合失調症についてお話を伺いました。